ホットプレイス
緑あふれる夏
小金剛渓谷

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夏の旅行先と言えば「海」が真っ先に思い浮かぶだろうが、避暑を求める人々でにぎわう海辺ではなく、静かな場所で夏を満喫したいなら、緑豊かな森と滝が流れ落ちる涼やかな渓谷をおすすめする。江陵の複数の渓谷のうち、「小金剛渓谷」には気軽に歩きながら美しい絶景を堪能できるトレッキングコースがある。

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小金剛は五台山国立公園の一部を成している長さ13kmの渓谷で、うっそうとした森や雄壮な奇岩絶壁、大迫力の滝などが素敵な景色を織りなす名勝地。江陵を代表する偉人であり朝鮮王朝時代の性理学者である栗谷・李珥が、ここの素晴らしい自然景観に感動し、金剛山を縮小した「小さな金剛山」という意味で「小金剛」と名付けたとされている。
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遠い昔の栗谷・李珥の足跡を辿りながら小金剛渓谷を楽しんでみてはどうだろう。小金剛渓谷には複数の探訪コースがあるが、小金剛探訪支援センターを出発して九龍瀑布まで行くコースが最も知られている。難易度はそれほど高くないため初心者でも十分に歩くことができる。
(移動距離:往復6km、所要時間:3時間)
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小金剛探訪支援センターの方に行くと「小金剛」という文字の刻まれた石碑と探訪路の入り口が見える。その中に一歩足を踏み入れると、別世界に引き込まれたかのように、緑深い森の道が広がる。
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木の枝をそよがせる風、岩の隙間を流れる水、名も知らぬ鳥たちのさえずりを楽しみながら歩いていると、小金剛渓谷の最初のスポット「武陵渓瀑」に出会う。中国の詩人・陶淵明が詠った架空の地「武陵桃源」に似ていると言われる場所で、その名の通り仙人が遊んでいそうな神秘的な雰囲気が感じられる。

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武陵渓瀑からさらに20~30分歩いていくと、浸食により小金剛渓谷の滝が徐々に後退して形成された「十字沼」が現れる。十字型の深い淵を見つめていると悠久の時が作り出した絶景に圧倒される。

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十字沼の次のスポットは、滝の下に水の落ちる様子が、まるで蓮の花のつぼみのようだと言われる蓮花潭。日差しを受けて水面に映る水の影は花びらのように美しい。
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九龍瀑布まであと1kmほど、足に疲れを感じる頃になると、小金剛渓谷の絶景と見事に調和している千年の古刹「金剛寺」が現れる。1964年、チョンガクという僧によって創建されたこの寺院は、大自然の中でしばらく瞑想と思索を楽しむひとときを与えてくれる。

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金剛寺から遠くない場所に小金剛を代表するもう一つのスポット「食堂岩」がある。高麗時代に新羅の最後の王子である麻衣太子とその兵士たちがご飯を食べた場所という説と、栗谷・李珥が食事を楽しんだ場所という説が伝わっている。実際、多くの登山客がこの食堂岩で休憩を取りながら軽食や弁当を食べたりする。

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再び元気を出してこのコースの終着点である九龍瀑布へ向かって歩き出す。渓谷からエアコンに負けないくらい涼しい風が吹いてきて額の汗を乾かしてくれる。これが夏の登山の醍醐味だろう。息を切らしながら急な階段を登り切ると、渓谷に響く滝の音が耳に飛んでくる。まさに栗谷・李珥の「雷の音が渓谷を揺るがすようだ」という言葉にふさわしい。
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九龍瀑布は9つの大小さまざまな滝が連なった形の多段滝で、九龍沼から出た9匹の龍が一匹ずつそれぞれの滝に住みついたとされる。岩を伝って流れ落ちる滝の周りに緑の木々が生い茂っており、涼しげな風景を作り出す。それを見ていると夏の暑さが吹き飛んでいくような気持ちになる。次の季節の小金剛はどのような姿を見せてくれるのだろうか。紅葉の色づいた小金剛が気になるなら、秋の山歩きを計画してみるのもおすすめ。
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- 小金剛渓谷
- 住所 : 江陵市連谷面三山里75
- お問い合わせ : 五台山国立公園事務所 小金剛山分所 +82-33-661-4161
- 交通アクセス : 江陵駅から市内バス300番に乗車して連谷面事務所で921番に乗り換え